雨の朝、その人は地下鉄の駅から出て来た。
頭にビニール袋ひらひらさせて。
それが、雨の日に配達される新聞を包むビニールであることは、
ひきちぎって開封したらしい跡でわかった。
すれ違った時、なぜか「勇ましい」という言葉が浮かんだ。
誰も彼を見ていなかった。
私を楽しませるために現れた妖精だったのかも。

080606